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主に見てきた芝居の話

立川談志追悼公演 「落語立川流 in 平成中村座」


2月20日(月)、平成中村座立川談志追悼公演「落語立川流 in 平成中村座」に行つてきた。
歌舞伎会のおかげで取れた席だつた。
話によると販売開始5分くらゐで売り切れたといふ。
 
席を押さへたときは、まさか自分の状態がこんな風になるとはと思つてもみなかつたので、かなり不安定な状態で行つた。
おかげで、大爆笑の渦の中でひとり取り残される、といふことも一度ならず。
でも、行つてよかつた。
高座に上がるとみな一様に(除 談春)「実感ない」といふやうなことを云ふてゐたが、実際、さうなんだらうなあ。
 
落語はやつぱりいいなあ。
なにがいいつて、なにもないのになにかあるやうに思へるのがいい。
世の中ますます「目に見えるもの」を重く見る傾向が強まつてゐるやうな気がするけれど、「星の王子さま」にもあるぢやあないか。「L'essentiel est invisible pour les yeux.」つて。
この夜だつて、ちやんと与太郎が、津軽弁の人が、疝気の虫が、俥屋とその客が、長兵衛と権八がそこにゐた。
見えないけどちやんとゐたんだ。
 
談笑の「金明竹」、志らくの「疝気の虫」、中入りがあつて生志の「反対俥」、談春の「白井権八」で、その後この四名に中村勘三郎と高田文夫で座談会。
 
なにか「ぶつとんでる」やうなものが好きなので、中入り前の方が好みだが、まちつと落ち着いた状態だつたら、中入り後の方が楽しめたかもしれない。
 
あちこちに書いてあるけれど、談春はこの月勘三郎が新橋演舞場で「鈴が森」で権八やつてるのを知らなかつたといふ話だつた。
や、そんなの、信じる人、ゐないでせう。
もし万が一ほんたうに知らなかつたら、芸人失格だよ。
 
山本夏彦が、「半分死んだ人」といふ題名で本を出さうとしたら、「関西ではそれでは売れません」と云はれた、とどこぞで書いてゐた。
柴田元幸には「死んでいるかしら」といふ本がある。
 
かういふ追悼の仕方、いいよね。
座談会の話は結構どこかで聞いた話もあつたけど、それにしたつて抱腹絶倒。
勘三郎も、かういふブラックなところを本業にも活かしてくれるとうれしいなあ。
多分、その他多くの中村屋贔屓はそんなこと望んでゐないとは思ふけど。